水泳の授業に思うこと『ジェンダーレス、熱中症、事故防止…』

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 毎日、絶賛プール学習が続いています。

 子どもたちは、水遊びが大好きです。大雨や雷で中止になった時の悲壮感、脱力感がヤバいです(笑)

 さて、そんなプール学習ですが、多方面で様々なニュースが飛び交っています。

ニュース

ジェンダーレス対応水着

今夏から導入 「ジェンダーレス対応水着」で水泳授業【長野・岡谷市】

abn長野朝日放送より

TOKYO MX news FLAG より


熱中症対策、コスト削減

ANNnewsCH より


事故防止対策

ドデスカ ! ch より


思うこと

ジェンダーレス対応水着について

 世間で騒がれているほど、私の学校では声が上がっていません。子どもたちも、男子の9割は上半身裸の今までのスタイル、保護者からも「こういう水着を使用していいですか」という問い合わせはほとんどありません。

 田舎だからでしょうか…。

 でも、声が上がっていないからそのままで良いというものでもなく、今後の対応を考えていかなければなりません。

 その中で私が気になるのは、「学校指定」という言葉です。いちいち何もかも学校が指定する今のスタイルは、もう時代にマッチしていないのではないでしょうか。それよりも、誰でも自由に選択でき、その選択をみんなが尊重する教育をしていくというのが、学校の役目だと思うのです。

 例えばジェンダーレス水着を学校指定にしたとします。

 お金の問題で言えば、上下水着、水泳キャップ、大きめのタオル、ゴーグル、道具一式を入れるバッグなど、わずか1か月の学習で使う物に、10,000円程度の支出が発生します。1回買えば6年間使えるというものでもなく、成長期の子どもであれば、水着は毎年購入する必要があるかもしれません。子どもの学年が上がれば、今までのタオルやかばんのデザインは幼稚だから変えたいと言ってくる可能性もあります。

 子どもの思いから言えば、水泳を習っている子は、肌にまとわりついて泳ぎにくいと感じ、もっと日焼けをしたくないという子は、長ズボンの水着の方がいいと感じ、宗教上男女の区別をするのが当たり前という考えの家庭で育った外国にルーツがある子は、同じデザインは許せないと感じ…など、子どもの思いも千差万別です。

 このように、「学校指定」にしてしまうと発生する問題は少なくありません。

 最低限のラインは必要かもしれませんが、個別のニーズに合わせ、自由に選択できる体制を整えていくことが、今後の課題かなと思います。

熱中症対策、コスト削減について

 学校のプールは暑いです。

 プールサイドのコンクリートの表面温度は50度を超えることもあります。その上を裸足で歩くと、足の裏がやけどしそうです。(もちろん、そんなことにならないよう散水をしてはいますが…)

 また、最近では水中での熱中症の事例も多くなっています。水泳は思っている以上に体力を消耗します。水の中にいても、汗をかき、体内の水分は失われていきます。そのため最低30分ごとに休憩を取り、水分補給を確実にさせなければなりません。  

 それが、屋内でできるとなるとどうでしょう。もちろん、全ての問題をクリアできるわけではありませんが、子どもたちの健康面を考えると、私は大いに賛成です。

 設備の整った民間のプールが利用出来る学校はそこへ、ない場合は、地域に1か所屋内プールを設置して、近くの学校が共用する形にすれば、初期費用はかかるかもしれませんが、維持管理するコストは確実に浮きます。

 さらに、老朽化のためプールの改築が必要な学校も、近年は多くなっています。10数校のプールを修繕・改築するのであれば、地域に一つの屋内プールへとシフトしていくのにはちょうど良い時期だと思うのです。

 また、屋内プールであれば、温水プールにすることも可能で、通年で使用することができます。そうなれば、酷暑の時期を避けて授業を行うことができ、子どもの健康がさらに守られます教員側も、天候に左右され、必要な学習内容を全て終えることができなかった…ということがなくなります

(大きい声では言えませんが、教員側の負担が減ることにもつながるかなと思っています。注水、薬品の投与、pH・塩素濃度・水温・気温の測定、プールのゴミをとるということを、早朝、昼、放課後にローテーションを組んで行い、記録しています。時には土日にも確認に行きます。夏休みにはプール解放のための監視当番も回ってきます…。)

事故防止対策について

 プールの事故はどんな時に起こりやすいと思いますか?

 それは、「プールに入る時」です。プールの深さを確認せず飛び込んで、そのまま溺れることが圧倒的に多いそうです。

 学校では、まずプールサイドに座らせて、水の温度を体で確認して…というような段取りでプールにゆっくり入りますので、そのような事故は起こり得ないと思いますが、レジャーでのプールや、川遊びなどでは注意が必要です。

 ただ、いくら注意していたとしても、体調の急変や何かしらの事故で、子どもが溺れることがあるということは常時意識していなければなりません。

 また、子どもは「静かに溺れる」と言われます。溺れた状況を理解できず、もしくは呼吸に精一杯で声を出す余裕もなく、静かに沈みます。声が届くところにいるから大丈夫!は大間違いです。絶対に目を離してはいけません。

 そして、もし溺れた時、プールの底が灰色や水色で、水着が紺色だと大変見つけにくいです。オレンジや黄色だと見つけやすいのですが、「学校指定」の水着はなぜか紺色が多いですよね…。

 また、全員が同じ色だと、子どもの区別がつきにくいです。みんな同じ水着、同じ帽子、そしてゴーグルで顔が隠れていると、もう誰が誰だか分かりません。指導のしにくさはもちろんですが、今日調子が悪い子(気分的に)、水に対して特に苦手意識を持っている子を、30人の中から見つけて気にかけるというのは至難の業です。

 子どもの命を守るためには、「カラフル水着」も考えていかないといけませんね。



☆アイキャッチの「花に囲まれた男の子」の写真は、pixabayVictoria_Regenさんが撮影した写真を使用させてもらっています。

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